2018年5月19日土曜日

「朝鮮半島全体の非核化」を承諾したトランプ大統領と在韓米軍撤退論

「朝鮮半島全体の非核化」を承諾したトランプ大統領と在韓米軍撤退論


前回、米国は北朝鮮の核兵器を完全に無くすために中国と共同作戦をとり朝鮮半島をもはや中国に任せるという意思を固めたという話をした。*拙稿:鮮戦争終結宣をトランプ大統領が祝福する意味
北朝鮮の核兵器を完全に無くすことが出来、その見返りに「韓国は中国の勢力圏」であることを認めることは戦略上、米国の大きな敗北を意味するので、それはあり得ないと考えた人もいることだろう。
これと同様に特に韓国では「韓国は戦略上重要な地域にあるので在韓米軍は絶対に撤退しない」という論が強い。

今回はこれは敗北ではなく今米国は「韓国は重要ではない、在韓米軍は韓国が出て行けと言えば出ていく」という戦略に大きく傾いていることを論じる。韓国は自分たちがおかれている戦略上の状況変化を認識したほうが良いだろう。

◆新アチソンライン(東アジア防衛ライン)の変更

同盟国を守るため米国は朝鮮半島は中国に任せる、つまり朝鮮半島は放棄するという防衛戦略とは、端的に言えば、中国共産主義との防衛ラインを対馬海峡と台湾海峡にするという軍事戦略である。


金正恩委員長の「朝鮮半島非核化表明」は核・ミサイル開発の時間かせぎを狙う擬態が最有力視されたが、それと同時に「米軍の台湾駐屯」論が注目されている。
韓国が北朝鮮・中国寄りでは在韓米軍は保たない。軍隊まるごと人質になってしまう。仕方ないので、次善の策として在韓米軍という持ち駒、戦力を台湾に振り分けるという一旦引いて体制を整えるという戦術である。

つまり新アチソンラインを対馬海峡西水道で引き直すということである。

台湾は①中国が軍事膨張を止めぬ南シナ海②人民解放軍の台湾侵攻で来援が期待される米空母打撃群の通り道=太平洋③中国の対日侵略で緒戦の舞台になる東シナ海-の「3海域=戦略的3要衝の交差点」に位置する。

日本列島~沖縄~台湾を結ぶシーレーンに自衛隊や米軍に加え台湾軍が防衛線を敷けば、中国の東方侵出を封じ込める巨大な抑止力になる。
つまり防衛ラインは何も陸上ばかりでは無い。海を抑え海で勝てれば再び陸上を抑えることは容易である。
このように今や台湾は沖縄と並び米国が構築する新しい世界秩序の重要策源地なのである。
日本にとっても経済の生命線たるシーレーン防衛の「守護神」である。もはや朝鮮半島は重要策定地としての地位を失い、その要は台湾に遷り、日本も沖縄、壱岐対馬もシーレーン防衛の最前線に立つということである。

トランプ米政権の大統領補佐官(安全保障問題担当)ジョン・ボルトン元国連大使も「米軍の台湾駐屯」を提唱したが、即ちこれがトランプ米政権の軍事戦略ということである。その証拠に中国の猛反発にもかかわらず台湾と軍艦の相互訪問や政府間の相互自由訪問を認める法を署名している。

 米国軍艦と台湾軍艦との相互訪問を認める法令に署
 トランプ大統領が「台湾旅行法」に署名

このように米国は着々と朝鮮半島から台湾に東アジアの戦略拠点を移しているのである。当然、トランプ大統領はこれにより共産主義との防衛ラインの前線に立つことにもなる日本にもこの事は伝えてあるとみて良いだろう。4月17日の日米首脳会談ではトランプ大統領は安倍首相にそれ相当の覚悟を求めたと思われる。
以上の米国の大きな戦略の変化があったことを念頭に、在韓米軍の撤退と北朝鮮の非核化を見れば米国が何をしようとしているかが見えてくる。

◆米国、在韓米軍撤退を示唆


在韓米軍撤退の話を一蹴していたトランプ政権であったが、新任のジェームズ・マティス国防長官は4月27日「平和協定が締結されれば、米軍が韓半島に継続して駐屯する必要はあるのか」という記者の質問に「我々が協議すべきイシューの一部。」「今後は外交官がその問題を扱わなければならない」と言った。まったく在韓米軍撤退が無ければ否定するはずであるが、検討課題であると事実上認めたのである。
続いて韓国、文正仁大統領外交安保特別補佐官も4月30日「平和協定締結後は、韓半島(朝鮮半島)における在韓米軍の駐留を正当化しにくくなるだろう」と発言した。
これに対し、青瓦台(チョンワデ、大統領府)はすぐに火消しに乗り出した。「在韓米軍は必要」と釈明し続いて北は在韓米軍を容認していると付け加えている。
この流れから米国との間でそのような「在韓米軍撤退」の話し合いが両国であったのは確実である。それが事実であるから米朝会談などの影響を考え韓国政府は火消しに走ったと見てよい。 

要するに、文政権は公的には在韓米軍の重要性を認め撤退を否定しているが、与党議員たちら政府首脳陣は頻繁に在韓米軍撤退を公言しており、こうした人物達が重要なポストを続けているということは「在韓米軍撤退」で実際は韓国政府は動いているということである。

元々トランプ大統領も、防衛はその国が行うという論、つまり在韓米軍の縮小や撤退を言っており、過去にも対北朝鮮の非核化交渉で在韓米軍の縮小や撤退が話し合われてきた事実を忘れてはいけない。
米国も韓国と同じように「在韓米軍の縮小」論が時期を同じくして持上がりホワイトハウスも火消しに動いたことから、対北朝鮮の非核化交渉で在韓米軍の撤退或いは大幅な規模縮小が交渉材料に入っている可能性がかなり高いと見てよいだろう。
むしろトランプ大統領は北朝鮮との非核化交渉に、在韓米軍の撤退や縮小を外交交渉の材料に使い始めたと見るべきである。何故なら韓国は在韓米軍が撤退せざるを得ない決定的宣言をしてしまったからである。即ち先月4の南北首脳会談にける「朝鮮半島の非核化」がそれである。

元来「北朝鮮の非核化」が主題であった。ところがこの宣言で「朝鮮半島の非核化」とその論点を摩り替えられてしまい、北朝鮮は「在韓米軍の核の非核化」という悪魔の外交カードを握り、米国と韓国側に突きつける事が可能となったのである。

何度も核兵器開発をしないと言っては開発を続けた北朝鮮が、一部カモフラージュで核兵器の廃棄は見せるだろうが、核弾頭を隠すことは実に容易であり絶対に無くすことはないだろう。
それを前提に絶対に過去のように騙されないと言っている米国は、隠し持った核兵器による核攻撃も想定せざるを得ない。そうであるならむしろ「在韓米軍撤退ありき」になってしまう。
この韓国は「朝鮮半島の非核化」宣言は、米国に対する決定的な裏切りとなってしまった。
在韓米軍が全滅する可能性もあるなか、一旦朝鮮半島から撤退して体制を整えるしか方法がなくなったのである。

しかも現状既に韓国内で「朝鮮半島の非核化」という文言に危機感を持つ人は保守系の一部にしか既にいな上に、現状の韓国政府は北朝鮮に事実上操られ、北朝鮮が「言葉だけで何もしていない」のにもかかわらず、韓国側は北朝鮮にとって都合の悪い政策を次々と中止にしている。
例えば次の通りである。
しかも韓国は米国と日本、中国も含めまだ核問題に関連した経済制裁が継続中にも関わらず「経済支援」の話を文在寅大統領自ら進めている。
一方北朝鮮の態度は、まだ北朝鮮は言葉だけで何もしていないのにもかかわらず、韓国に対して「在韓米軍が撤退せざるを得ない要求をし、南北が「双方の敵対行為の中断」を話し合っている最中にも韓国に対して攻撃を続けている。
それにもかかわらず、韓国は北朝鮮に取り入るための政策と経済施策、つまり米国を裏切ることばかり官民一体となって行っている。
韓国には何をやっても、米国はそれを理解し守ってくれるという思い込みが存在し、一部の保守を除いてこのような行為が米国に対する裏切り行為であるという感覚すらない。
韓国軍部は影響力を持つために米国との軍事機密情報を中国や北朝鮮に流しても米国はそうせざるを得ない韓国を理解しなければならないという独特の価値観を金永三大統領以降つくってきた。 
在韓米軍が人質状態になり北朝鮮の隠し持った核兵器によって殲滅される可能性も想定している米国に対し、韓国は平昌オリンピック南北共同開催、南北首脳会談というプロパガンダにより米国を南北平和統一を妨げる悪に仕立て上げ「朝鮮半島の非核化」という悪魔のプラカードを掲げ、北朝鮮に都合のいいことばかり率先して行ってきた。

それにもかかわらず韓国には「北朝鮮の韓国核攻撃はありえない、韓国は地政学的的にも重要な国だ、米国はおろか世界を自分たちが動かしている米国を裏切っても米国は韓国を見捨てることは無い」という思い込みがあるゆえに、米国にとっては韓国はむしろ北朝鮮、中国側の国であり、一緒に命をかけて戦うことの出来ない信用できない国になってしまっていることに韓国は気づいていない。

このように韓国が「在韓米軍が朝鮮半島の非核化と平和の障害である」と撤退を公式に要求すれば、韓国と北朝鮮がつくりあげた米国非難の国際世論がある中、米国はそのままそれを承諾する可能性は非常に高い状況になってしまっているのである。

◆「朝鮮半島の非核化」を受け入れたトランプ大統領

トランプ大統領は韓国と北朝鮮が掲げた先ほどの平和統一の象徴として掲げた「朝鮮半島の非核化」宣言に対し5月10日返答をした。

『My proudest achievement will be - this is a part of it - but will be when we denuclearize that entire peninsula. This is what people have been waiting for for a long time.全文
 私の最も誇り高い業績は、これもその一部ですが、私たちがその半島全体を非核化する時です。 これは人々が長い間待っていたものです。』

ここでトランプ大統領は「北朝鮮を非核化する」ではなく「半島全てを非核化する」と言っている。
これは明らかに南北首脳会談の板門店宣言で宣言した「朝鮮半島の非核化」に対する返答である。

北朝鮮の核兵器だけでなく、その背後にいる中国やロシアの膨大な核兵器を前に「朝鮮半島の非核化」に応じると答えたのである。つまりこれは北朝鮮の隠し持った核兵器のみならず背後の中国やロシアが核兵器の脅威に朝鮮半島をさらして良いという意味である。核兵器の前に通常兵器では丸腰と同じである。即ち在韓米軍撤退を意味するのである。

こうなると朝鮮半島は中国やロシアの核兵器に脅され中国やロシアの言うことを韓国は聞かざるを得なくなるが、そのように朝鮮半島を放棄して、在韓米軍の兵力を台湾や日本に移すということである。
つまり米国にとっては撤退ではなく状況変化により作戦変更し、兵力を再編成し、日本列島~沖縄~台湾を結ぶシーレーンにおいて兵力を増強することにより中国・ロシアに対抗するということなのである。


北朝鮮は5月11日からの米韓共同訓練に反発し南北閣僚会談を中止した。またボルトン大統領補佐官のリビア方式の非核化発言米朝首脳会談中止に言及した。
これは3月27日と5月8日の二回もつづけて金正恩委員長が習近平主席と会談した影響であることは明らかだ。

これに対し5月17日トランプ大統領は北朝鮮が非核化の要求に応じれば、体制を保証すると発言した。

この発言も驚く内容では無い。
米国は北朝鮮の核兵器を完全に無くすために中国と共同作戦をとり朝鮮半島は中国に任せ、朝鮮半島の全体の非核化宣言に応じて在韓米軍は撤退するという意思を固めたことが分かっていれば「やはり」という感想になるしかない。
金正恩体制を保証するとは北朝鮮は中国に任せる、韓国も中国に任せ我々米国は朝鮮半島から撤退し、次の戦略に備えるということなのである。
来月6月に予定されている米朝首脳会談がどのようになるかはわからないが、既に米国と中国との間では方向性が決まっており、米国は腹を決めているのである。

それは即ち日本が台湾とともに中国共産主義やロシアと立ち向かう最前線になるということである。
一方朝鮮半島は悲願の高麗連邦という南北統一国ができるかも知れないが、それは韓国のその繁栄と富は中国と北朝鮮に奪われていくということを意味する。北朝鮮は奪うために何をするのか、平和にそれをするのか、暴力でするのか、隠し持った核兵器を使うのかも想定する必要がある。


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